「ねぇ、アイク」

「なんだ」


味噌汁が入った椀に唇をつけつつ、アイクは答えた。
今朝は清々しく、ああ今日はいい天気だな、なんて思っていた矢先のことだった。


「セックスって何?」


リンクが言い終わる前に、アイクは飲んでいた味噌汁をぶふーっと盛大に噴き出した。
そんなアイクを見てリンクは少し眉を顰める。
汚いなあと思っているのかもしれないが、アイクにとってはそれどころではなかった。
セックスだと?15歳の子供が何を言ってるんだ?


「おい…そんな言葉何処で覚えたんだ」


口の周りをティッシュで吹きつつアイクはリンクを小さく睨む。
少なくとも自分はそんな言葉を教えていないし、教えたつもりだってない。
するとリンクはご丁寧にも箸を置いて答えた。


「マルスさん」


あの野郎!!!
頭に浮かぶのは爽やかな笑みをたたえながら「やあ」と言わんばかりに片手を上げている友人・マルス。
彼の背後にはたくさんの薔薇が咲き乱れ、彼自身もキラキラと輝いている。
そんな友人を思い浮かべながら、アイクは箸を握り締めたままわなわなと震えた。
木製の箸でなかったため折れることがなかったのは幸いなのだろうか。


「ねぇ、セックスって気持ちいいの?」


少し小首を傾げているところが可愛くもあり憎たらしい。
こいつ本当は確信犯なんじゃないかとアイクは思ってしまう。
まぁそんなはずはないのだが。
握り締めていた箸を置くと、アイクは肘をついてはーっと息をついた。


「あのなぁ…お前はまだそんな年じゃないだろ」

「そんな年じゃないって…」

「お前には早過ぎるってことだ」

「でも俺もう15だよ?」

「まだ、だろ」

「けど、マルスさんが『僕の初めてのセックスは12歳だったよ』って言ってた…」


少し頬を膨らませて不満そうな顔をするリンク。
そんなリンクを見ながら、そろそろ一度あいつをシメあげてもいいのではないだろうかという思いが湧き上がる。
友達とか以前に、人間としての自覚を持たせてやらねばならない。
それだって友人の役目だ。
アイクはマルスの爽やかな笑みを思い出して、その端正な顔を引きつらせた。


(何が『僕の初めては12歳だったよ』だ。12歳の頃はまだ童貞だっただろうが)


アイクはマルスの初めてがいつだったのかを知っている。
別に知りたくもなかったのだが、彼がわざわざ言いに来たのだった。
それは今から4年前。2人が高校2年の時のことだ。
相手はと言えば、2人が通っていた高校の校内一可愛いと言われていた隣のクラスの少女。
マルスも所謂美少年であったため、マルスと彼女は校内一のカップルとしてもてはやされていたのだった。
当時の自分はまだ童貞だったから、そんな脱童貞宣言をしてきたマルスのことを内心でうざい奴だなと思い、
しかしそれと同時になんだか自分が負けたような気がして少し悔しかったことをぼんやりと思い出した。
だが次の瞬間、ハッと我に返ってアイクは自己嫌悪に陥った。
何が悲しくて朝からこんな会話をして、おまけに高校時代のことまで振り返っているのか。


「もういいだろ。こんな話」


少し苛立った口調で言いながら箸をとると、再びご飯を口に運ぶ。
いくら午後からの授業とはいえ、今日が登校日であることには変わりはない。


「なんで」

「なんでって…セックスなんてお前には関係ないだろ」

「別に少しくらいならいいだろ!俺だって男だから興味あるんだよ!」


リンクは左手に箸を握り締めたままガタン、と机に拳をつく。
そんなリンクを見てアイクは小さく溜め息をついた。
付きあってられるか。
そう思い、何も言わずに食事を続ける。
目の前で卵焼きを食べているアイクを見ながらリンクがぼそりと呟いた。


「なんだよ。アイクのケチ」

「………」


アイクの返事はなかった。
コチコチと無機質な時計の音だけが響く。
自分を無視して黙々と食事を続けたのが癪に障ったのか、リンクは何か覚悟を決めたように一度小さく唇を噛むと
もう一度口を開いた。


「アイク、もしかしてセックスしたことないの?」


ふふん、と少し馬鹿にしたような笑みを浮かべながら。
しかしどう見たって、リンクが無理して言っていることは傍から見れば誰でもわかる。
アイクは口の中のご飯を咀嚼すると、ガチャンと乱暴に茶碗と箸を置いた。
その動作があまりにも乱暴で、リンクは反射的に肩を竦めた。
そしてアイクはおもむろに立ち上がるとリンクの腕をぐいと引っ張る。


「来い」


一言だけ言って、後は何も言わない。
リンクはそんなアイクに何も反論できず、そのままずるずると引っ張られていく。
連れてこられたのはアイクの寝室だった。
ベッドとデスクの他にはクローゼットと本棚、そして小さめの棚しかないシンプルな部屋。
ベッドは壁に寄せてあり、リンクはそこへ乱暴に放り出された。
リンクが起き上がる間もなく、アイクがベッドに膝を付いて覆いかぶさってくる。
戸惑いを隠せないリンクは怯えた瞳でアイクを見上げた。


「な、何…っ…」

「知りたいんだろ?セックス。だから俺が教えてやるよ」


冷ややかな瞳にリンクの青い目が見開かれる。
ぎしりと軋んだベッドのスプリングが虚しく響いた。


-----------------------------------------------------------------------------
ブログで書いた大学生アイク×15歳リンク。
意外と好評だったので、近々続きも書きます(´∀`)
年齢差萌える…!って話。
あと珍しく鬼畜な団長。

BACK