誰もいない放課後の教室。
ぽつん、と一人で自分の席に座ってとりあえず宿題をやっておこうと思ってかれこれ1時間。
電気はつけない。
オレンジ色の光が窓から差し込み、白いノートを夕陽色に染め上げている。


「………」


自分は、一体誰を待っているんだろうか。
距離を置こうと決めたのは紛れもなく自分自身なのに。
まだ、彼のことを拭いきれない。
小さく溜め息をついて、ノートを閉じるとそれを教科書と一緒に無造作に鞄の中へ詰め込んだ。
そして席を立ったのと同時に、突然教室のドアが開く。
静けさの中、ドアをあけた時のガラガラという音だけがいやに大きく響いた。
慌ててドアの方を見れば、彼がいた。


「アイク…」


小さく呟く。おそらくその声は彼には聞こえなかっただろう。
アイクは無言で教室の中へと入り、ドアを閉めるとその前で立ち止まった。
リンクは少しばかり重たい鞄を肩にかけて、アイクの方へと歩いていく。


「あ、部活お疲れ。また明日な」


そういって、精一杯笑って見せる。
ぎこちない笑顔だということなんてわかっているけれども。
そして言い終わるや否や足早に通り過ぎようとしたのだったが、アイクに腕を掴まれてそのまま
ドアへと押し付けられる。
バン、と音を立てて、アイクはリンクの顔の真横の壁へと手をついた。
リンクは驚いて目を見開き、不安から眉根を少しばかり下げている。
あまりにも距離が近くて、意識していなくても鼓動は速まるばかりだった。
見つめられる。破けそうな、心臓。


「何故、俺を避ける?」

「え……?」


図星。
でも避けているのではなく、距離を置いたつもりだった。
だって、キミは何も言わないで遠くへ行ってしまうから。
嫌われたんじゃないかと思って、迷惑なんだと思って。
だから、距離を置こうと思った。


「さ、避けてなんか……」


目を逸らしつつ言うと、アイクは小さく舌打ちをする。
今までに見たことがないその行為に怯えにも似たような感情が芽生えるがそんなことを考えているのも
束の間で、もう片方の手でいきなり顎を掴まれる。


「あっ………」


あとほんの僅かで触れそうな唇。
リンクがきゅっと目を瞑ったのと同時に、パンッ、と乾いた音が響いた。
そして次の瞬間にはアイクを押しのけては勢いよく教室を飛び出す。
初めて他人、しかも友人に手をあげてしまったが、そんなことを考える余裕などなかった。


(なんで、どうしてだよ………)


きっと昼間なら「廊下を走るんじゃない!」と教師に怒られるのだろうけど、幸いこの時間帯には
ほとんどの人が校舎からいなくなっていた。
時計の針は5時58分をさそうとしている。
リンクは屋上へと駆け上がり、誰もいないその場所でしゃがみ込んだ。
くしゃりと髪を掴み蹲る。
走った後だから、はあはあと息をついて酸素を取り込まなければならない。
なのに、涙が零れ落ちて、コンクリートの床に染みを作っていく。


―悲しいの?嬉しいの?憎いの?恋しいの?―


色んな感情がぐるぐると渦を巻いて、心の奥の深い所へと沈む。


「もう、わからないよ……」


零れた声は、誰にも届かない。
黄昏は夕闇に飲まれかけていた。



みを拡大させる僕等

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ブログで突発的に書いたもの第一弾(ほんの少し加筆)
色々あって距離を置こうと言ったリンクに対してもやもやするアイク。
因みに2人は今の所は親友以上恋人未満みたいな感じ。

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