ぷちっ、ぷちっと引き抜かれていく緑の葉。
2人の青年が無言で同じ行為を反復する。
俺、何やってるんだろうなと思っていても、それは口に出さずに黙々と苺のヘタを取っていく。
こんなことになったのは、数分前のピーチの一言がきっかけだった―


「2人共、悪いけど苺のヘタをとってくれないかしら?」

「「は?」」


そういって、笑顔で差し出されたのは苺がたくさん入ったボウル。
みずみずしいその大ぶりな苺は洗い立てなのか、水滴がついていてきらきら光っている。
どうやらピーチ姫は苺タルトを作りたいようで、それにはヘタをとった苺が必要なのだとか。
自分でとればいいじゃないかと思うが、どうやら彼女にはカスタードクリームを作るという重要な仕事があるらしく
苺のヘタをとっている場合ではないのだという。
ちなみにサムスとゼルダも一緒に作るらしいのだが、生憎彼女達は買出しに出かけていて不在だった。
そこで、たまたまリビングで本を読んでいたリンクとソファーでうたた寝していたアイクに目星をつけて、今に至るのである。


「気の遠くなる作業だな」

「まぁな」


アイクがぼそっと漏らし、リンクは苦笑した。
確かに目の前のボウルには苺が山積みになっている。
こんなにたくさんの苺、一体何処から手に入れてきたのだろうか。
先程からずっとヘタをとっているももの、ちゃんと進んでいるのかそうじゃないのかいまいちわからないくらい量が多かった。


「あ!アイク!」

「何だ?」

「そんな乱暴にしたらダメだろ」

「む」


ヘタをぶちっと引き抜いては、ぽいぽいと苺をボウルに放り投げていたアイクを見てリンクが怒る。
怒るといってもただ注意するような口調であるが。
リンクは意外と几帳面らしく、ぷちぷちと綺麗にヘタを抜いていってはボウルにそっと入れていく。
別に潰れてないし、いいじゃないかとアイクは思ったのだが、そういうと更に怒りそうなので何も言わなかった。


「なんかアイクとこんなことしてるなんて変な感じだな」

「そうか?」

「だって、苺のヘタをとるなんてないだろ?」

「まぁそうだな」


言いながら、リンクに言われたように少しずつヘタをとっていく。
なるほど、確かにこっちの方が綺麗にヘタがとれる。
少し沈黙が流れた後、リンクが口を開いた。


「アイクは苺が野菜だってこと知ってた?」

「あぁ、まあ」

「俺、苺って果物だと思ってたんだけど…実は野菜なんだよなぁ」

「苺は果物みたいなものだけどな」

「そうそう」

「甘いからそう思うんだろうが…」

「けど果物は木になるものだからそうじゃない苺は違うんだ、って言われた時はショックでさ」


まだ幼かった頃、苺を果物だと思っていたリンクに苺は野菜なんだと教えてくれたのは村長のボウだった。
本人に悪気はなかったことはわかるのだが、リンク自身はずっと果物だと信じてやまなかったため
それなりにショックを受けた自分がいた。
今思い出せば笑ってしまうほどだが、当時の自分は子供だったから仕方がない。


「アイクだって最初は果物だと思っただろ?」


問い掛けられて、アイクはどうだったかと考える。
確かに言われてみればそうかもしれないが、自分は果物や野菜よりも肉ばっかり食べていた気がする。
それを伝えると、「何だそれ」と言ってリンクは笑った。


「そろそろ終わりそうだな」

「ああ」


空になりつつあるボウルを見て、リンクが言う。
かなりの量があったから、ずいぶんと長い間ヘタをとっていたんだなと思ってしまう。
袋に捨てたヘタも量が多く、白い袋の中が緑色に染まっていた。
こんなに大量のヘタは見たことがないな、とアイクは袋の中を見て考える。
そんな時、ヘタをとった苺をまじまじと見つめながらリンクはアイクに尋ねた。


「苺食べたらピーチ姫に怒られるかな?」


突然リンクが言い出して、アイクは目を丸くした。
カービィじゃあるまいし、つまみ食いだなんて彼にしては珍しい。


「この苺、甘そうだから食べてみたくて…」

「まぁ、いいんじゃないか。1つくらいなら」


こんなにたくさんあるのだから、1つくらい食べても問題はないと思う。多分。
まあ何とかなるだろうと思ってアイクは言った。
ピーチ姫だって鬼ではないし、苺が1つ足りなくても彼女なら上手く作れるだろうと思ったからだ。


「み、皆には内緒だからなっ」


リンクは苺を1粒とると、それを口の中に入れた。
噛むと口の中に果汁が溢れ、甘さが広がっていく。


「アイヒュもひゃへれは?」

「…何を言ってるのかわからん」


口をもごもごと動かしているせいか、言葉がはっきりしない。
アイクは呆れたような声を出すものの、状況からしてリンクの言いたいことはわかっていた。
ぐいっとリンクの手首を掴んで引き寄せると、果汁で濡れた唇に口付けた。


「ん、んんっ…ふ……!」


舌が入り込んできて、触れ合う。
リンクはそれだけで自分の体が熱くなるのを感じて、顔を朱に染める。
口の端から垂れた果汁が顎を伝って、ぽたりとカーペットについている手の甲に落ちた。
次第に口付けが深くなって、気がつけば頭をアイクの手で固定されていた。
ゆっくりと口を離されると、リンクは熱っぽい吐息を漏らす。


「甘いな」


口の端を上げながらアイクが言うと、リンクの顔が苺のようにかぁぁっと赤くなる。


「ばか…!」

「ここ、ついてるぞ」

「ッ!?」


顎を持ち上げられて口の端に残る淡い紅色の跡を舐められると、リンクの体が小さく跳ねる。
キスの時に飲み込めず零れた、苺の果汁。
あぁ、手で拭っておけば良かった、と思いながらリンクはきゅっと目を瞑った。




「うふふ、ラブラブねぇ」

「一体いつになったら苺をとりに行けるのですか…」

「あの分だと当分は無理でしょうね」


キッチンとリビングを仕切る壁の影から、団子のような3つの影が覗く。
微笑ましいわねぇと言って笑うピーチ姫。
その上で少々うんざりした雰囲気を醸し出すゼルダ姫を、その上のサムスが宥める。
3人に見られていることにも気付かず、リビングでは再び口付けを交わすリンクとアイクがいたのだった。










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甘いのか?どうなのか…^q^
アイクって何でも「ぬぅん」とか言いながら力任せにやってしまいそう(笑)
もうね、アイクとリンクは公認でいいんじゃないかと思うよ。
下の方にオマケをつけてみた(^ω^)


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「リンク」


夜、廊下を歩いていると後ろから名前を呼ばれた。
聞き覚えのあるその声は振り向かなくても誰のものかわかる。
リンクが振り返ると、そこにはゼルダ姫が立っていた。


「ゼルダ姫!俺に何か用ですか?」


そう尋ねると、ゼルダ姫は少し躊躇した素振りを見せる。
リンクが何だろう?と思って頭にハテナマークを浮かべていると、そんなリンクを見据えてゼルダは言った。


「私がこんなことを言う資格などないのですが…。キスなどは他人の目の触れない所でする方が良いと思います」

「えっ…?」

「それだけです。引き止めてすみません。おやすみなさい」

「あ、あの!キ、キスって……」


踵を返してスタスタと行ってしまうゼルダ姫の後姿を見ながら、リンクは廊下に呆然と立ち尽くす。
ぽつんと一人取り残された廊下で、考えた。
キス、キス………。
すると、昼間のことが鮮明に浮かび上がってくる。


(ま、まさか見られてた………!!!)


顔から火が出そうなほど真っ赤になる。
恥ずかしい。よりによってゼルダ姫に見られてしまうなんて。


「ア……ア、アイクーー!!!」


リンクは屋敷中に聞こえる声で叫ぶと、アイクの部屋へ駆け込んで行った。
しばらくの間、アイクはキスをさせてもらえなかったとかそうじゃないとか。


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言っておくけど2人は公認でいいと思うんだ(しつこい)
でもゼルダは、「見てる方が恥ずかしいわ!と思うから、いちゃいちゃするならこっそりしてね」と勇者に
アドバイスをしてあげているわけです笑

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