「珍しいな。アイクが本を読んでるの」
「そうか?」
そういってアイクは顔を上げて俺を見た。真っ直ぐな眼差し。いつもどおりの仏頂面だ。
時はもう放課後で、自分達以外には誰もいない教室。窓から差し込むのは黄昏の光。
オレンジ色に染まったカーテンが風でゆらゆらと揺れている。
秋風というには少し寒い風が教室の中へひゅっと入り込んで、2人の髪を撫ぜた。
ちらりと本の表紙を盗み見すると、何やら難しい単語が並んでいる。
「難しそうな本…」
「そうでもない」
「ふぅん」
何処までも真っ直ぐな君。その瞳には何が写っている?どうやったらそんなに強くなれる?
どんなに辛くたって挫けないその姿を見て、俺は羨ましくもあったし妬ましかった。
そしてこんなに歪んだ自分の性格が嫌だと思う。
今もこうして自分とは違うアイクに劣等感を抱いている俺がいて。
でもアイクはそんなことを知るはずもなく、おもむろに俺の肩に手を伸ばすと何かを摘んだ。
「髪の毛。ついてたぞ」
夕陽を反射してきらりと光る俺の髪の毛。
アイクが手を離すとふわりと落ち、俺はただそれを眺めていた。
ふと顔を上げるとアイクと目が合う。口元に浮かぶ笑み。滅多に笑わないのに。
不意に見せるその微笑を独り占めしたいと思ってしまう。
けどアイクはカッコイイし頭も良いし、スポーツだって何だってできる。周りにはいつも皆がいた。
そんな彼とは対照的に、俺は全てが普通だった。埋もれた、凡人。
アイクがいなくなったら、ひとりぼっちになる自分。
「リンク?」
辛いよ。悲しいな。飲み込む言葉。吐き出すことなんて出来ない。
俺はただ、ぎこちなく笑った。
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