in the nurse
気を失った担任を抱えつつ、アイクは器用に保健室の扉を開ける。
ガラリと音を立てながら扉が開くとアイクはそのまま中に入り込んで扉を閉めた。
保健室特有の薬品の匂いがアイクの鼻を掠める。
好きでもなければ嫌いでもなかった。
校医であるドクターマリオは生憎不在らしく、部屋には自分達以外誰もいない。
辺りを見回しても、目に入るのは薬品が入った棚や教師の机にベッドという保健室には
ありふれた光景だった。
「誰もいないのか…」
静かな部屋だったために、呟いた一言がいやに大きく聞こえる。
アイクはおもむろにベッドに近くと、カーテンを開けた。
そろそろ腕も疲れてきたため、靴を脱がしてベッドにそっと寝かせる。
ネクタイを外すべきか迷ったが、とりあえずそのままにしておいた。
頭を打ったんだから冷やした方がいいのか?と思ったが、自分勝手なことをして酷くするわけにも
いかないので、その辺の処置は校医が帰って来てから任せようと思った。
ひとまず自分の役目はこれで終わりだ。
アイクは壁にかかった時計をちらりと見やる。8時47分。
まだ1限目は始まっていない。
(あいつらは大丈夫なんだろうか…)
ふと、クラスの面々を思い出す。
元はと言えば奴らが原因でこうなってしまったのだ。
まぁ止めなかった自分もいけないのかもしれないが。
アイクはベッドで眠る担任へと視線を向ける。
金色の髪がはらりと白いシーツに散っているその様が、何故だか酷く厭らしく見えた。
少し身を屈めると、そっと手を伸ばして髪の毛に触れる。
自分のものとは違って、柔らかい手触りだった。
「ん………」
痛む場所に触れてしまったのか、眉根を寄せて頭を横に動かす。
アイクは慌てて手を引っ込めた。
それと同時にうっすら瞳が開かれる。
「あ……ここは………?」
ゆっくりと頭を動かして辺りを見回す。
アイクのことにはまだ気付いていないようだった。
「保健室だ」
そう答えてやると、ハッとしたように青い目が見開かれた。
澄んだ瞳が揺らぐ。
そして制服姿のアイクを見て思考がはっきりしてきたようで、慌ててがばっと飛び起きる。
それは寝坊した時の感覚に似ていた。
「おい、まだ安静に…!」
「あ、あの、授業…授業は!?どうしよう、俺……!」
アイクを見上げる青い瞳。
自らの失態に絶望しているのだろうか。
一歩社会に出ればそこは競争の世界で、新人だからと言って緩くしてもらえるほど甘くはない。
そのことはきちんと理解しているのだろう。
しかし彼の場合は運が悪かったとしか言いようがない。
あそこであんな悪戯に遭っていなければ、普通にことを済ませられたかもしれない。
まぁアイクが見ている限り少しばかりおっちょこちょいな部分もあるようだが。
「落ち着け。あんたは頭を打って気を失ったんだ。そんな状態で授業が出来るわけないだろう」
「けど……!」
「他の教師にはクラスの奴が事情を話しているはずだ」
恐らくゼルダが隣の教室の担任にことを伝えているのではないか。
それ以前に、あんな派手な音がすれば自分達のクラスで何かあったと嫌でも気付くはずだ。
「そっか…」
自分の不甲斐なさに、落ち込んで俯く。
真っ白なシーツをきゅっと掴むその手は心なしか震えていたように見えた。
沈黙が流れ、コツコツという時計の針の音だけが静寂を裂いていく。
アイクはおもむろに身を屈めると、肩を抱いた。
すると驚いたのか一瞬びくりと体が跳ねたが、そのまま耳元でそっと囁く。
「失敗は誰にでもある。だから、あんたが一人で落ち込むことはない」
「…っ……!」
失敗は成功のもとという言葉もある。
失敗しない人間なんていない。誰しも失敗を重ねて人は成長していくのだ。
アイクが身を離すと、目の前の青年はアイクを見据える。
吸い込まれそうな青い瞳で。
そうしていると、突然ガラリと音がして扉が開く。
ドクターマリオが白衣を翻しながら保健室へと入ってきた。
「やあやあ、すまないね。ちょっとばかり薬を調合していて…。おや、リンク先生どうかされたのですか?」
「あの、実は頭を打ってしまって…」
「なんと!それは不運でしたな。もう気分は宜しいのですか?」
「おかげさまで。彼がここまで運んでくれたので」
そういって笑うと、リンクはアイクの方を見た。
ドクターマリオもアイクを見てふむと頷く。
「そうですか。それは良かった」
「俺、そろそろ戻りますね。皆を待たせっぱなしじゃ悪いし…」
「気分が宜しいのであれば。皆きっと先生のことを待ってますよ」
そうですかね、と苦笑しつつリンクはベッドから降りる。
皺になった部分を手で撫でて直すとドクターマリオの方に向き直った。
「また何かあったら気軽にいらして下さい」
「ありがとうございます。それじゃあ、失礼しました」
にこりと笑って一礼すると、入り口の方へ歩き出す。
アイクも軽く会釈をして後をついていき、廊下に出たところで担任がもう一度頭を下げるのを見てから
扉を閉めた。
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マリオの口調がよくわからない(^ω^)
なんかもう別人だなあ…!
そしてアイクはなんで教師に対してタメ語なんだろうか^q^
でも敬語はなんとなくイメージと違う気もしなくはないんだよな…。
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