一体どのようにしてこのようになったのだろうか。
今の状況を簡潔に説明すると、カービィが用意した鍋をみんなで囲っている。
そして部屋は真っ暗。何故か。
唯一の灯と言えば、鍋の下にあるコンロの火くらいだろうか。
しかしその炎も勢いよく燃えているわけではないため、かろうじてみんなの顔が認識できる程度だった。
暗闇の中で、誰かがごくっと唾を飲む。
「では…これより闇鍋を始めたいと思います…」
カービィの可愛らしい、けれど真面目な雰囲気を思わせる声が暗闇に響いた。
Wonderful pot
ことの発端は、テレビ番組でやっていた鍋特集だった。
様々な産地の産物をお取り寄せし、それ具材にして鍋をする。
たったそれだけのことだったのだが、食べることが何よりも大好きなカービィが鍋の魅力にとり憑かれた。
何でも、1つの料理で野菜や肉や魚など色々なものが食べられ、その味を楽しむことが出来るのが良いと言うのだ。
そこで彼は「せっかくだからみんなで鍋やろうよ!」と提案したのだった。
―しかし、何故それが闇鍋になったのか、その過程は定かではない。
闇鍋というのは、各自思い思いに持ち寄った食物を、灯を消した中で鍋で煮て食べる遊びのことをいう。
闇鍋も含め、通常鍋料理は冬にやるものであるが、この世界においてそんなもの関係なかった。
というよりもカービィが食べたい食べたいと駄々をこねたから鍋をするに至ったわけだが。
幸か不幸か、リンク、ロイ、アイク、マルス、シーク、ネス、ダークリンク、フォックス、ファルコ、ピーチ姫、マリオ、
そしてピカチュウの11人+1匹がカービィに見初められた闇鍋勇者となった。
はっきり喜んでいいのか悲しんでいいのか全くわからないが、とにかく闇鍋をすると聞いたメンバーはそれぞれ
「これだ!」と思った食物を持ち寄ってそれらを鍋に投げ込んだ。
そして、これからいよいよその闇鍋が始まるわけである。
鍋の中では、早く食べてくれと言わんばかりに食物がぐつぐつと音を立てている。
ちなみに暗闇であるが故に人が識別しにくいため、ここからは会話に名前をつけて進行していきたいと思う。
リンク「だ、誰からいく…?」
ピーチ姫「時計周りでいいんじゃないかしら?」
フォックス「いや時計回りって言っても暗いから…」
カービィ「うーん、じゃあネスから!」
一同((( えぇぇええええ!!? )))
ネス「オーケィ!」
一同((( いいんだ!? )))
トップバッターに選ばれたネスは何の躊躇いもなく鍋に箸を突っ込む。
一回自分の受け皿にとってから、確認もせずに口に入れた。
ネス「じゃあ、いただきまーす」
他のメンバーは固唾を呑んで、ネスを見守る。
と言っても、暗いから何も見えないのだが。
もぐもぐと口を動かしている音が聞こえる。
ネス「んん?魚…?」
リンク「あっ多分俺が持ってきたトアルナマズかも」
マリオ「ナマズって食べられるのか?」
ファルコ「まぁ毒ではないからな」
アイク「俺は肉の方が好きだ…」
ロイ「誰も聞いてねーよ!」
マルス「でもいきなり変なの引かなくて良かったんじゃない?」
シーク「確かに」
マルスの言葉にシークが同意する。
それは内心で誰もが思ったことだった。
しかし安心するみんなをよそに、カービィが爆弾を投下する。
カービィ「あっちなみに食べられない、もしくは口に入れられなかった人は罰ゲームね〜!」
きゃっと笑いながらカービィが嬉しそうに言う。
もちろん、顔は見えていない。
ダーク「てめぇ罰ゲームって何だよこのピンク玉!ぶっ飛ばすぞ!」
リンク「ちょっ、ダーク…!落ち着いて…!」
ピカチュウ「ピ、ピカ〜」
マリオ「ば、罰ゲームって…」
ロイ「ぜってーやだよそんなん…!」
フォックス「というよりも食べられない物が入ってること前提なのか…?」
フォックスの言葉に全員が冷や汗を流した。
カービィ「まあまあ!そんなこといいから続けよっ」
一同「「「 いやいや、よくねえよ!! 」」」
そんなこんなで、闇鍋は続いた。
しかし思いの外みんなまともな物を持って来ており、ロイが引き当てた何処かで見覚えのある
キノコ以外は普通の食べ物だった。
そしてそろそろ鍋の中も半分を過ぎてきてややマンネリ気味になった頃、事件は起こった。
マルス「結構減ってきたね…」
シーク「もう半分くらいは食べたみたいだな」
ネス「なんだぁ、全然普通だね。つまんないな〜」
ダーク「フン、つまんなくていいんだよ」
ロイ「ちょっ…そんなあからさまに…」
リンク「次は誰の番?」
ファルコ「俺だ」
カービィ「はいっ、じゃあファルコの番で〜す!」
カービィの声と共にファルコの箸が鍋の中を探っていく。
ファルコがファイヤー!と言って引き抜いたものは、得体の知れない丸い物体だった。
大きさが土星さんくらいであることがその影からわかる。
ファルコ「な、何だ…これは…?」
ネス「ワオ。しかも結構大きいね」
ロイ「た、食べ物だとは思うけど…」
アイク「とりあえず食べてみればいいんじゃないか?」
まぁそれはそうなんだがと思いつつ、ファルコは恐る恐るそれを口に入れる。
その途端、ぐじゅりと音がして口の中に鍋のだしと何故だかわからないが甘ったるいクリームの味がした。
ファルコ「あ、甘……」
ピーチ姫「あっ!それはきっと私が入れたシュークリームですわ」
一同((( !!?? )))
語尾にハートをつけてうふんとピーチが笑う。
ファルコが口に入れたのは、鍋のだしを吸って膨れ上がったピーチ姫のフェイバリット・スイーツである
特製シュークリームだった。
ピーチ姫「我がピーチ城において最高のパティシエに作らせたものなのよ」
そんなものは鍋に入れずにそのまま食べたかった…。
ファルコはそう思いつつ、涙目でぐじゅぐじゅになったシュークリームを飲み込む。
ごくっと喉が動いたと思ったら、ファルコはパタリと倒れて動かなくなった。
フォックス「ファ、ファルコー!!」
ピカチュウ「ピカカー!」
ロイ「うわーファルコが倒れたー!」
リンク「ファ、ファルコ!しっかり!」
アイク「ま、まさかそんな物が入っているとはな…」
ダーク「お前の姫さんは何考えてんだよ」
マリオ「そ、そんなこと言われても…!」
カービィ「はいはいっ!続き続き!」
そう言って持っていたおたまとフライ返しをドラムのばちの如くかんかん鳴らすと、カービィはファルコを
部屋の隅に追いやった。
リンク「ヒドイことになってる…」
アイク「仮にも意識がない奴を放り投げたからな」
カービィ「もう、いちいちそんなこと気にしないの!次はフォックスの番だよ」
自分の名前が呼ばれ、フォックスが小さく呻く。
フォックスは「ファルコ大丈夫かな…」と倒れた仲間を思いつつ箸を鍋の中へ入れる。
そして何かを掴んだと思って引き上げてみると、今度はいやに小さなものがとれた。
豆くらいの大きさであるが、さっきのシュークリームのように水分を吸っているのがわかる。
フォックスの背中を嫌な汗が伝う。
ピーチ「何かしらね?」
マルス「まあ食べてみればわかるよ」
と、マルスは爽やかに笑う。
自分じゃないからいいよなと心の中で毒づきながら、フォックスは豆らしき物体を口に含んだ。
肉っぽいけど草のような味もする。
ピカチュウ「ピカピカ〜!」
カービィ「あっそれポケモンフードだって」
ネス「へー!」
フォックス「ポ、ポケモンフード!?」
嬉しそうな声を上げるピカチュウをカービィが通訳する。
ポケモンフードとは言わずもがなポケモンの餌である。
タマムシデパートで徳用サイズが売っているとかいないとか。
ロイ「まぁピカチュウらしいって言ったらピカチュウらしいけど…」
アイク「いいじゃないか。同じ動物だし」
フォックス「動物って言うな!」
半泣きになりながらフォックスは叫んだ。
まあフードである以上食べられないものではないのだが、ポケモンと一緒にされるのは
自分の中のプライドが許さなかった。
そんなこんなでまた鍋の中身は減っていき、最初は12人いたメンバーも気付けば半分の6人になっていた。
ファルコを始め、あの後にフォックス、マリオ、ネス、ロイ、ピカチュウが立て続けに脱落していったのだ。
リンク「なんかメンバーが随分減ったような気が…」
マルス「気のせいだと思うよ」
ダーク「大体変なもん引く方が悪いんだよ」
リンク「そっそんな…こんな真っ暗じゃお鍋の中身なんてわからないよ…!」
アイク「肉が食いたい…」
ダーク「テメーは少し黙ってろ!」
そういうや否や、今度はダークが鍋の中に端を突っ込んだ。
そして引き上げた物を漢らしくがばっと口に入れるが、それから動きが止まる。
何だ……これ…。そう思って口から出してみると、なんと薔薇の花だった。
ダーク「…あ……?」
シーク「あぁ、それは僕が入れた薔薇の花だよ」
ピーチ「まぁ!薔薇の花なんてロマンチックね」
みんな口には出さないが「何処がだよ」と突っ込む。
しかしそんなこと露知らず、シークは薔薇の魅力についてうんぬん語り始める。
薔薇は花の王といわれており、その高貴な香り故に香料用にも用いる……。
あまりにもだらだら説明が続くので、とうとう痺れを切らしたダークがシークをまくし立てた。
ダーク「アホかてめぇ!薔薇なんて食えるかっつーんだよ!」
シーク「失敬だな君は!その茎についている棘をとるのに僕がどれだけ苦労したと思ってるんだ!」
「知らねーよ」と誰もがそう思った。
こんな時ばかり一致団結するスマックスメンバーである。
マルス「じゃあ次は僕の番だね」
爽やかな笑みを浮かべつつ、今度はマルスが鍋の中に箸を投入した。
なんだか固いものを掴む。
鍋から出してみると、テニスボールくらいの大きさの丸いものだった。
心なしかゴツゴツしているようにも見える。
リンク「きっとまたなんか変な物が…」
マルス「そんなことないよ。僕はみんなのこと信じてるから」
今まで散々ひどいものを引いてきたというのに、この期に及んで何を言うのか。
マルスはキラキラしたオーラを放ちながらそれを口に入れた。
途端、ごりっと変な音がする。
アイク「何だ?今の音」
カービィ「あっそれねーピカチュウが持ってきたカミナリの石だよ!」
ダーク「へぇ。カッコイイじゃん」
マルス「ははっ、カミナリの…石……?」
何がカッコイイのか全く持って謎であるが、とりあえずマルスのオーラが只ならぬものになっている気がする。
しかし幸い部屋が暗いため、みんなは見て見ぬ振りをするだけですんだ。
カービィ「さぁさぁっ!そろそろラストスパートだよ!」
カービィがおたまで鍋の縁をかんかんと叩く。
鍋も具がほとんどなくなり、底が見え始めてきていた。
ピーチ姫「次はリンクの番じゃないかしら?」
リンク「ああぁぁぁ…い、嫌だ……」
ダーク「時の勇者が情けないこと言ってんじゃねーよ。ほら」
そういってダークが鍋の中に箸を入れて、取り出したものをリンクの受け皿へ放り投げる。
その瞬間、べちゃっと変な音がした。
何だか只ならぬ恐怖を感じてリンクが涙目になる。
リンク「な、なんか今変な音した…!」
アイク「気のせいだろ」
シーク「もうここまで来たら怖いものなんてないはずだ」
いやいやいや!と心の中で大否定するも、この人達には逆らえないと悟ったリンクは
泣く泣く箸を手にとって皿の中に投げ込まれた物体を掴み上げる。
水分を含んで少し重くなったそれを持ち上げてリンクは固まった。
リンク「え……これ…く、靴下………?」
ずっと暗闇にいたせいもあって目が闇に慣れており、大体の物は判別出来るようになっていた。
そしてリンクが今掴んでいるでろーんとした物体は一体誰が放り込んだのだろうか、まぎれもなく靴下であった。
「「「……………」」」
ぐつぐつと空になりつつある鍋が煮詰まる音だけが響く。
誰も言葉が出なかったのだが、ここは主催者であるカービィがちゃんと仕切り直す。
カービィ「はーいリンクが靴下引きましたー!靴下ー!」
リンク「えっ、ちょっ、えぇぇぇええぇ!?」
シーク「く、靴下って…」
マルス「引きたくても中々引けないよね…」
口元を押さえてマルスとシークがぶっと吹き出す。
アイクも笑ってはいけないと思っているのだろうけどどう見たって吹き出す1歩手前で、ダークに至っては大笑いしていた。
リンク「なッ何だよ!元はと言えばダークが入れたんじゃないか!」
ダーク「だってお前がちんたらしてるからだろ」
リンク「なっ…!?俺、やだよ!こんなの絶対食べられるわけないじゃん!」
カービィ「ちなみにそれはワリオの靴下で〜す」
リンク「なおさら嫌だよ!!てゆーか誰が入れたんだよ!!」
靴下ってだけでも無理なのに、あのワリオの靴下なんて口に入れられるわけがない。
最早リンクは半泣きだった。
突然、電気がついてぱっと部屋が明るくなる。
カービィ「まっ食べられないなら仕方ないよ」
リンク「カービィ…」
まぁまぁと言いながら、ぽよぽよと音を立ててリンクの傍に近づく。
流石にいつ洗っているのか見当がつかないワリオの靴下は食べられないとカービィ自身も思ったのだろうか。
肩をぽんぽんっと叩かれて、リンクは彼の優しさに再び目を潤ませる。
だがカービィはそんなリンクを見て、ぱちんとウインクした。
カービィ「じゃあ、罰ゲームはリンクってことで!」
リンク「!!??」
驚いている隙に両腕をがしっとアイクとシークに掴まれる。
そして、動けないリンクの前に何かよからぬことを企んでそうな顔のダークとマルスが立ちはだかった。
リンクの顔がざーっと青くなる。
リンク「い、嫌だ…こ、来ないで……!」
次の瞬間、ぎゃああああという勇者らしからぬリンクの叫び声が虚しく響いた。
カービィ「ワリオの靴下が入ってたってことは、ずっとあれでだし取ってたってことだよね。あー僕あれ食べなくて良かった」
がちゃがちゃと洗い物をしながら、カービィは呟いた。
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なんぞこれ(´▽`)
4月に鍋ってのもどうかと思うのだけどとりあえずみんな暴走しすぎですいませんでした。
ダークは基本静かな子なんですが、ちょっと口を開けば超生意気の俺様キャラなんで…す…!
なんかみんなの口調が似たり寄ったり(ファルコとフォックスとか)になってしまって難しい…。
罰ゲームはご想像にお任せします(笑)
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