愛される記憶
午後の日差しが差し込む中、リンクは書斎の片付けをしていた。
片付けと言っても一人でではなく、マルスとマリオと一緒だ。
屋敷の広さ故か、三人が片付けているこの書斎も中々の広さ。
もっとも、使用頻度はそこまで高くはないのだが。
事実、あまり使われないためか本棚にしまわれている本にはうっすらと埃が積もっている。
「全く、こんな埃まみれになってるとは…」
「あんまり使われていないから仕方がない」
ばさっと舞い上がる埃を見て咳き込みながらマルスが言うと、マリオは苦笑しながら宥めた。
「窓を開けたらいいんじゃないですか?」
リンクは出窓を指差しながら、二人に問いかけた。
この書斎には一つだけ大きな出窓がある。
その窓からは絶えず暖かい光が部屋に差し込み、部屋を照らしていた。
埃が舞う度に、陽の光のせいできらきらとダイヤモンドダストのように見えてしまう。
マルスは部屋をぐるりと見回すと、リンクの方を見て頷いた。
「そうだね、そうしようか」
「うむ。その方が空気も入れ替えることが出来ていいかもしれないな」
マリオも頷いて、リンクの提案を受け入れる。
リンクはほっとしたように肩の力を抜くと、「じゃあ、俺開けますね」と言って窓を開けた。
外の空気が入ってきて、部屋の中を満たしていく。
暑くもなく寒くもない気候で、吹き抜ける風は心地よかった。
「これなら作業がはかどりそうだ」
積み上げられた本を持ち上げながらマリオが言うと、二人は頷いた。
「やっぱり部屋の換気は重要ですね」
言いながら、リンクはぎっしりと並べられた本を一冊ずつ本棚から引き出していく。
埃をかぶってしまっているため、一度綺麗にしなければならなかったからだ。
本棚から出してはテーブルに積み上げるという作業を繰り返していると、突然ひらりと何かが落ちる。
「あれっ、今何か落ちなかった?」
「あ、はい…!」
マルスもたまたま目撃したらしく、片付ける手を休めてリンクの方へ近づいてくる。
落ちたのは一枚の紙切れ。
紙切れといっても小さいものではなく、ポストカードを一回り小さくした大きさだった。
誰かがしおり代わりとして本に挟んでいたのだろうか。
リンクはしゃがんでその紙切れを拾うと、裏返してみた。
マルスも横から覗き込んで、リンクと共に描かれているものを見据える。
「これ…」
「へえ、懐かしいね」
その紙切れはただの紙切れではなく、古ぼけた写真だった。
マルスとロイと、そしてリンクが写っている。
ただ、今ここにいるリンクとは違う、もう一人のリンク。
穏やかな笑みを浮かべる自分と瓜二つの人物を、リンクは食い入るように見た。
そんな時、マリオが「どうしたんだ?」と言いながら二人の下へやってくる。
「昔の写真が出てきたんだ」
「ほう。それは、何たる偶然」
「この頃はまだロイもいたんだっけ」
マルスはリンクの隣でピースをする赤毛の少年を見て笑った。
「そういえば、リンクはもう一人のリンク…でいいのかな。には会ったことがあるの?」
思いついたようにマルスが問い掛けると、リンクは小さく首を縦に振る。
「でも、トキには一度しか会ったことがないんです」
「トキ?」
「あっ、その、俺達の間ではトキとトワって呼び合ってるんです。二人共リンクだとなんだか変な感じなので」
「なるほど。確かにそっちの方が区別がつくからな」
マリオも腕を組んで頷く。
同じようにトライフォースと持つハイラルの勇者でも、二人は住んでる世界も時代も全く異なっていた。
しかし別人とはいえ、やはり同じような境遇であるが故か似ている部分も多いのもまた然り。
外見的にも内面的にも。
「あの…変なことを聞いてもいいですか?」
「いいけど…。どうしたの?」
「俺が…今回選ばれなかったらトキが選ばれていたんでしょうか…」
俯きがちに二人に問い掛けるリンク、もといトワの言葉には戸惑いのようなものが含まれていた。
聞きたいけど、聞いてはいけないと思っているかのように。
マルスは少し首をかしげてから、肯定する。
「うん…まぁ、そうなるのかな。でもどうして?此処に選ばれたの、嫌だった?」
「い、いえ!そうじゃないんです。ただ…」
「?」
「本当に俺なんかで良かったのかって考えることが…」
いつもは元気があるのに、珍しく今日のリンクは塩らしい。
でもそれはきっと、尊敬するトキを差し置いて自分が選ばれてしまったことに罪悪感のようなものが
あるもかもしれない。
彼の優しさ故に生まれた感情。
そんなリンクの心のうちを汲み取ったのか、マルスとマリオは先輩としてフォローを入れた。
「確かに、君が選ばれたからトキは選ばれなかった。でも君は選ばれたことが気に入らないってことだろう?」
「ち、違います!選ばれた時は嬉しかったけど…」
「だったら、もっと胸を張ればいいのさ。トキの分まで、リンクが頑張ればいいんだ」
「頑張る?」
「そう。リンクが彼の分まで強くなればいい。トキだってそれを望んでいると思うよ。くよくよして落ち込んでいたら、
それこそ選ばれなかった彼には失礼じゃないかな」
二人に言われ、リンクは小さく頷く。
今までずっと自分に重くのしかかっていたものが、すっと消えていく感触。
なんだか急に肩が軽くなった気がした。
「それにさ、あんまり考えすぎるとハゲちゃうよ」
冗談交じりにそう言われ、リンクはなんだか恥ずかしくなって顔を朱に染めた。
そして、やっぱりこの人達はすごいんだなと思った。
途端に自分が酷くちっぽけな人間に見えて、自分もいつかこうなれるのだろうかと考える。
「やっぱり、二人に会えなくて寂しいとか思うんですか?」
不意にリンクが尋ねると、マリオとマルスは一瞬驚いたような顔をする。
だが顔を見合わせてからマリオが頷いた。
「まあそれは否定出来ないな。でも、永遠の別れじゃない」
「マリオの言う通り。離れていても、僕達は仲間だから」
この空の下にいる限り、とマルスは付け加えてから微笑した。
大事なのは物理的な距離じゃなくて、心の距離。
遠いけど、近い存在。
強い信念で結ばれた彼らの絆が壊れることは、おそらくないだろう。
リンクは何か大事なことを教えてもらった気がした。
「そう…ですね」
色褪せた写真を見て、リンクは笑う。
広い部屋には、暖かな光が満ちていた。
-----------------------------------------------------------------------------------
マリオの口調がわからない。・゜・(ノ∀`)・゜・。
言われないと誰だか全然わからないね!知ってる!←
私の個人的設定によりロイは皆と一緒にいるけど、本当なら時オカリンクとロイは別の場所にいるんです。
でも彼らの間には固い絆があるから、離れていても仲間なんだということが言いたかった(・ω・)
あと何となくリンクを敬語にしてみたら新人っぽくなった(笑)
BACK