愛の泉
「こんな部屋あったんだな…」
「ああ。この神殿にいるモンスターの奴らだって知らない部屋だから、お前が知るはずないだろうし」
「隠し部屋なんだな」
此処はダークが個人的に持っている水の神殿の一室だった。
彼しか行き場所を知らず、彼しか入ることの出来ない部屋にリンクは招かれている。
リンク自身こんな部屋があるなんて、ダンジョンとして来た時は知りもしなかった。
部屋にはキングサイズのベッドが壁に寄せられて置いてあり、他にはソファーとテーブル、そして
2脚の椅子と棚が置いてある。
壁には丸い形の窓が1つだけぽつりとあった。
意外にも全て白で統一されており、初めてこの部屋に入ったリンクは目を丸くした。
「ダークって白好きなんだ?」
「お前…俺のこと何だと思ってるんだよ」
「いや、別にそういう意味じゃないよ!てっきり黒が好きなのかと思ってたから…」
「まあ黒の方が落ち着くけどな」
「そっか」
リンクは真っ白なベッドにばふっと倒れこむ。
ふかふかしていて、こんなベッド生まれて初めてだった。
「ちょっ、おま…っ!ベッドに寝るならブーツ脱げよ!汚れるじゃねーか」
「ご、ごめん……」
意外と綺麗好きなのか、ダークが少し苛立った口調で言う。
リンクは謝るとブーツを脱いで、ベッドの真ん中にちょこんと座った。
「このベッド、すごいふかふかしてて気持ちいいな」
「まぁな」
そういってダークもベッドに上がり、リンクの向かいに座った。
少し見つめ合った後、ダークがリンクにそっと唇を寄せる。
最初は啄ばむようにして口付けていたが、次第に深いものとなっていく。
「んっ……ぁ、ふ……っぅ、んん…ッ…」
息をしようと思ってリンクが少し口を開けると、すかさずダークの舌が入り込んでくる。
舌と舌が触れ合い、リンクがカァっと赤くなる。
キスなんて何度もしているのに、この瞬間にいつも力が抜けてしまう。
初めはベッドのシーツを掴んでいたリンクも、ダークの腕を掴んで自分の体を支えた。
「ゃ、ん…はぁ…っ……ダー…ク……っ…」
口を離せば、どちらのものともつかない唾液が名残惜しそうに糸を引く。
ダークはリンクの右頬に手を添えながら、口を開いた。
「明日だろ……」
「…うん……」
添えられた手にリンクが頬を寄せ、ダークの手首を優しく掴む。
明日はガノンドロフとの決戦の日だった。
囚われたゼルダ姫とハイラルを救うための最後の戦い。
この日のために時空をも超えて、リンクは数々の敵と戦ってきたのだ。
今更後になど引けないし、負けるわけにはいかなかった。
「でも俺、全然怖くないよ。むしろ明日で全部終わるんだって考えると少し寂しいかも」
そういってリンクは笑う。
明日で全て終わるのだ。
ガノンドロフがハイラルを支配する暗黒の時代と共に、長かった自分の旅も。
だがダークは笑っていなかった。
「俺は…怖い……」
「ダーク……?」
ダークは俯いて呟く。
思わぬ言葉にリンクは驚いた。
彼らしくない発言だった。
「あいつは強い。トライフォースの力を手にしている以上、俺には到底叶わない」
「………」
それはリンクもよくわかっていることだった。
彼は力のトライフォースの持ち主であり、間違った方向であるにしろその威力は強大である。
はっきり言って、生きてガノンドロフに勝てるかと問われたらリンクも自信がなかったし
ダークもそれを薄々でありながらも感じているのだろう。
「でも、ハイラルを救うのが俺の役目だから…」
「ハイラルを救う…?冗談じゃない」
そういって、ダークは自嘲気味に笑う。
リンクは一瞬彼が何を言ってるのかわからなかった。
「なっ、何言ってるんだよ…!ガノンドロフにハイラルを支配されたままでいいわけないだろ!?」
ハイラルだけでなく、ゼルダ姫も今はガノンドロフに囚われているのだ。
勇気のトライフォースの所有者である自分しか、ゼルダ姫もハイラルも救うことは出来ない。
それはダークもわかっているはずだった。
「ハイラルを守るのが俺の使命なんだ!ダークだって守りたいものを守る気持ちがわかるだろ!?」
「あぁわかるよ!嫌という程な!」
「じゃあ何で……ッ…!」
自分のことを理解してくれていると思っていたのに、そう思っていたのは自分だけだったのかもしれない。
全てを否定されたような気がして、その悲しみからリンクの顔が泣きそうに歪む。
だがそんなリンクを見て、ダークも顔を歪めた。
「まだわかんねぇのかよ…!」
自分の言いたいことが伝わらなくて苛ついているのか、もどかしいのか。
ダークがリンクの腕を掴む。
リンクが抵抗する間もなく、今までにないくらい力強く抱き締められた。
「ハイラルなんかよりもお前の方が大事なんだよ!リンク!!」
リンクの目が思わず見開く。
こんなことを言われるなんて不意打ちだった。
動揺するリンクをよそに、ダークは言葉を続ける。
「自分を犠牲にして何の意味があるんだよ…。ハイラルは救われてもお前が死んだら意味ないだろ…!」
「…それ…は……っ…」
「ハイラルがあいつに支配されるよりも、俺はリンクがいなくなることの方が怖い」
心の奥底を抉られているようで、リンクはやりきれなかった。
言葉が出てこない。
やっとの思いでリンクが出来たのは、精一杯の力でダークを押し返すことだった。
「リンク……?」
「俺…怖いものなんてないよ……死ぬのだって、今は怖くない」
リンクは俯いたままぽつりと呟く。
今まで嫌というほど怖いものは見てきたし、怖い目にもあってきた。
親のように慕っていたデクの樹サマの死。
10歳で世界に放り出され、それからは日々敵と戦ってきた。
いつ自分が死んでもおかしくない状況だった。
そして7年の時を経て変わってしまったハイラル。
世界の全てを見てきたリンクにとって、また時の勇者である以上、今更怖がってなどいられないのだ。
リンクはダークの洋服をくしゃっと掴んで、声を絞り出す。
「ねぇ、ダーク…覚えてる?7年前に城下町で悪ガキにからまれてる俺を助けてくれたこと…」
「…あぁ……」
忘れるわけがない2人の出会い。
たまたま城下町を歩いていたダークが、3人の少年達にからまれていたリンクを助けたことがきっかけだった。
「あの3人なんて自分と同じただの子供だったのに、7年前の俺は森を出たばっかりで何も知らなかったから
これが世界なんだって知って怖かった」
「それは…仕方ないことだろ……」
「でもダークが助けてくれて、本当に嬉しかったんだ…」
「………」
「…だから、今は……ダークに嫌われることだけが怖、い……っ…」
「……っ…!」
森を出たばかりだから何もわからなくて、心細かった自分に手を差し伸べてくれた。
あの後ダークは何処かへ消えてしまったけど、こうして7年後にまた出会えた。
偶然じゃなくて必然。
奇跡じゃなくて運命だった。
「好き……」
蚊の鳴くような声でリンクが言う。
「え……?」
「ダークが…好き……」
注意して聞かないとほとんど聞き取れないほど小さな声だったが、確かに聞き取ったダークは動揺の色を見せた。
ダークもリンクのことは好きだった。
しかし自分達は神に選ばれし勇者とガノンドロフの手下、つまり敵という関係であり、恋仲になれるわけがない。
禁忌を犯してキスはしているが、一方的にダークからするだけでリンクからしたことはなかった。
リンクは自分からダークに対する気持ちを伝えたことが未だかつてなかったのだ。
「男なのに、変だって…わかってる……でも、ダークが好きなんだ……」
震える声で言葉を繋いでいく。
ダークがリンクの頬に手をかけて顔を上げさせると、目には涙が溢れていた。
「死ぬのが怖くないなんて嘘だよ……」
そういって弱弱しく頭を振るリンクをダークはただただ見据えていた。
リンクが自分の手の甲で目を押さえる。
涙が頬を伝っていくのが見えた。
「やだ……死にたくない……ダークと一緒にいたい……っ……」
「リンク……っ…!」
言いようのない衝動にかられ、ダークはぎりっと奥歯を噛み締める。
リンクは尚も玉のような涙を零しながら、うわ言のように言葉を繰り返す。
「ず…とダークと一緒、に……ッ……っん―ッ!」
理性がガラガラと音を立てて崩れていく。
ダークはリンクの手首を掴んで押し倒すと、深く口付けた。
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長いので一旦区切り!
後半は普通にエロとか\(^o^)/
相変わらず勇者なのに乙女なリンクですいません。
ていうかこの二人ベタベタしすぎててどうなのさ…!←
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