「初めまして。トキさんですよね?」
「そう…だけど…」
突然の訪問客に俺は固まった。
青い瞳。緑色の衣服。黄金色の髪。両耳のピアス。
見た目は俺とほとんど同じだった。
違うといえば、前髪の分け目だろうか。
目の前のそっくりさんは俺と違って横わけにしている。
流れる前髪がなんだか大人っぽく見えて、反対に額を出している自分が子供のように思えた。
「俺、トワです。トアル村という所で牧童をしていました。今は…貴方と同じ勇者ですけど」
そう言って見せた少し困ったような、でも屈託のない笑顔。
背中の鞘に入っているのはマスターソード。
世界を託された証。
「あ、ああ…。よろしく」
俺と同じ運命を辿った青年だった。
しかしこの時、こいつは自分にはないものを持ってると俺は確信して、いささか悔しかったのを覚えている。
どうしてそう思ったのかはわからなかったけど、とにかく自分とは同じようで違うと思った。
* * * * *
「そんなこと、俺は聞いてない!」
「でももう決まったんだよ」
「だけど…っ…」
声を荒げる俺。
その横では気まずそうな顔をしてトワが立っていた。
そして目の前にいるのは、ゆったりとした深い緑色のソファに座り、脚を組んでいるマスター。
「リンク…いや、トキ。別に君を追い出そうっていうわけじゃないんだ。ただ、トワにも機会を与えたくてね」
「それはっ…!そう、です…けど…」
話の経緯はこうだった。
俺が大乱闘のメンバーから外され、代わりにトワが入ると。
確かに、何人か新しいメンバーが入るために入れ替えがあることは聞かされていた。
でもまさか俺が外されるとは思ってもみなかった。
別に俺が外れるわけないと自信があったわけじゃない。
だけど、俺の代わりに俺の「そっくりさん」が入るという事実が受け入れられなかった。
「君ならわかってくれるよね」
微笑をたたえながらそう言われて、俺は唇を噛んだ。
ぎゅっと握った拳が小さく震える。
俺は何も言えずに部屋を飛び出した。
「トキさん!」とトワが叫んだ声が聞こえたが、俺にはそんなのどうでも良かった。
「トキさん!待って下さい!」
「なんだよ!ついてくるな!」
はあはあと息を切らしながら俺は怒鳴る。
屋敷を飛び出した俺を追いかけてきたのはトワだった。
待って下さいなんて言われて待つバカが何処にいるんだ。
トワなんかに捕まりたくなくて、俺はがむしゃらに走った。
なのに、後ろからにゅっとトワの腕が伸びてきて俺の腕を掴まれる。
(しまった…ッ…!)
俺がそう思ったと同時に、やつに後ろから抱きすくめられた。
転ばなかったのが幸いであるが、俺は離れろと言わんばかりにじたばたともがいた。
「何だよ!離、せよ…っ…!」
「嫌です」
「おい!」
「嫌です。離しません」
そう言って、より強く抱き締められる。
背中から伝わる温もりに戸惑い、いつしか俺は抵抗することをやめてしまっていた。
「俺のこと、バカにしに来たんだろ…」
「なっ!何言ってるんですか!違いますよ!」
「どうだか。お前だって嬉しいだろ?いきなり俺の代わりとして引き抜かれたんだもんな。大体マスター…」
「だから、違うって言ってるじゃないですか!」
俺の声を遮ってトワは声を張り上げた。
それがあまりにも予想外の出来事で、俺の体は驚きで小さく跳ねる。
すると、トワは先輩である俺に対して失礼な態度をとったと思ったらしく一瞬言葉を濁らせた。
「大乱闘の件はすみません…。けど俺も全然知らなかったんです。自分がこんなことになるなんて…」
「………」
「嬉しくないなんて言ったら嘘になります。でも、別に貴方を困らせようとか、そんなことは全然思ってません」
ぽつりぽつりとトワは話す。
彼は謝罪の言葉を述べるが、はっきり言ってこいつは全然悪くないし何もしていない。
マスターが決めたことにただ頷いただけだ。
でも俺がそれを認めたくなくて、一人で喚いて、悪いのは全部俺だ。
謝らなきゃいけないのは俺なのに。
「俺が大乱闘に出たら、トキさんが出られないことはわかってます。でも…」
自分に回された腕にそっと手をかける。
トワの吐息が俺の耳を掠め、身動きが出来なかった。
どうしようもなく胸の鼓動が速いのは、走ったからなのか。
それとも―
「俺が貴方の分まで強くなります」
その言葉にハッと目を見開く。
いつの間にか緩められていた腕を振りほどいてトワの方を振り向くと、目が合って微笑まれた。
優しい色をした青い瞳。
「……っ…」
なんだか急に目頭が熱くなって、俺はやつの肩に顔を埋めた。
こんな顔、見られたくない。
しかしトワは何も言わず、黙ってそんな俺の頭を優しく撫でてくれた。
牧童というだけあって、こうやって撫でることになれているのだろうか。
随分と優しい手つきだった。
かっこ悪い。俺の方が先輩なのに、年下に慰められるなんて。
でも、悔しいのに嬉しいなんて。
「負けたら…許さないからな……」
肩から顔を離し、トワの顔を見据えながら俺はそう言い放った。
本当は許さないなんて思ってないのに、何故だかそんな言葉が口から零れる。
言われた本人は一瞬きょとんとした顔をしていたけど、すぐに笑いながら「はい」と頷いた。
英雄は君の隣に
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初めてのリンリン(なんだか人の名前みたいに…)
こんな感じでいいのだろうか。よくわからん(´q`)
トワさんはわんこ!時岡さんはつんでれ!マスターは穏やかだけどサディスト←
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