Sweet Trick
「Trick or treat!」
「……は?」
絵本に出てくる魔法使いが被っている黒い三角帽子を被ったトワが目の前でにこにこしながら
そう言うと、トキは対象的に眉を顰めながら読んでいた本から顔を上げた。
彼は周りの人から好青年と思われがちであるが、実は結構怒りっぽい性格なのである。
それがトワだけに対してなのか、それとも隠しているだけで他の人にもそうなのかは本人以外は知らない。
とりあえずそんなトキにめげることなく、トワは笑みを絶やさずに言った。
「だから、Trick or treat!」
「だから何だよそれは!」
ばん、と本をしおりも挟まずに乱暴に閉じるとトキが怒鳴った。
別に怒鳴ることないじゃないか。
トワはそう思うが、そんなトキの性格を知っているから何も言わない。
「トキさん、ハロウィン知らないんですか?」
「ハロウィン?」
目を丸くしながらトワが尋ねると、トキは顎に手を当てて記憶の糸を手繰り寄せる。
言われてみれば、自分が昔屋敷にいた時にカービィ達がそんなこと言っていたような気がする。
仮装して、袋を持って、「Trick or treat!」と言いながら屋敷の中を走り回っていたちびっこ達。
自分が仮装してた記憶がないから、きっとお菓子をあげる側だったのだろう。
10月の屋敷は黒とオレンジでデコレーションされていて、まさにハロウィーン一色だった。
イベントに疎かった自分は、皆がそうやって盛り上げてくれることで楽しむことが出来たのだ。
そんなことを思い出しつつトキが懐かしさに浸っていると、トワが声をかけて現実へとトキを呼び戻す。
「それで、trick?それともtreat?」
意外にも流暢な英語を披露しつつトワは尋ねてくる。
10月31日がハロウィンであることを知っていたが、今日が10月31日だと思っていなかったトキは当然
お菓子など準備していない。
かと言って、悪戯されるのもごめんだった。
「俺、お菓子なんて持ってないんだよな…でも悪戯されるのも嫌だし…」
独り言のようにぶつぶつ呟いていると、トワがトキの横に座り込む。
ハロウィンには不釣合いの白いソファー。
トキが何だと思ってトワを見ると、トキの唇にすっと人差し指を添える。
「お菓子ならあるじゃないですか」
此処に、と言って、トキが返答をする間もなくその唇を塞ぐ。
あまりにも突然の出来事だったせいか、トキは抵抗することも忘れてトワの口付けを受け入れていた。
しかし舌が触れ合った途端に我に返り、トワの肩をぐいぐいと押しやって自分の口から離した。
「な、にするんだ!ばか!」
「何って…。Treat?」
口元を手の甲で押さえるトキを見て笑いながら、甘いですね、なんてトワは言う。
何の悪びれもなく言うトワを見て、トキは顔を真っ赤にした。
Treatでキスってどういうことだ。しかも俺がお菓子ってことなのか?
しかもトワの言った「甘い」というのが「Sweet」という意味で、そう考えると怒りよりも
恥ずかしさが込み上げてくる。
「だからってキスすることないだろ…!」
赤い顔でトキはそう言うが、キスを仕掛けた当事者であるトワは当然のことをしたまでといった顔でトキを見る。
似ているようで似てない自分達。
トキは年下(1つだけだが)のトワに振り回されてる自分が嫌だと思いつつも、いつも流されてしまう。
今だってそうだった。
気がつけばソファに押し倒されていて、見上げるとトワがいる。
だがこのままじゃいけないと思ったトキは肩を押して抵抗の色を見せた。
「おい、何するんだ!もういいだろ!」
「ダメですよ。まだ足りない」
「足りないって…」
「それに……」
トワは身を屈めると、トキの耳元で囁いた。
「俺、こう見えて本当は狼なんですから。知ってるでしょ?」
実際にトキは見たことがないが、トワが狼に変身できるということは知っていた。
同じ勇者でありながらも、自分には与えられていない力を彼は持っている。
押し倒した時の衝動でなのか、最初に被っていた黒い帽子はいつの間にか脱げており、トキの目にはトワが
本当に狼のように映った。
耳朶をトワの舌が這い、耳の付け根にキスをされる。
「やっ…ぁ、トワ……っ…」
「いただきます」
クスっと笑いながら言うと、今度は唇に口付けた。
外から聞こえる子供達の声。夜は、長い。
Trick or treat!
それはとても甘美な悪戯。
happy halloween...
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2日遅れでハッピーハロウィーン!
マイブームなトワ時にしてみました。
狼リンクえろす!仮装する必要なし(笑)
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