「アイク…」
名前を呼ばれて振り返ると、そこには白い布を一枚纏ったリンクが立っていた。
光沢のあるその布はおそらく絹で出来ているものだろうか。
リンクは無言でアイクに近づくと、少し背伸びをしてアイクの首に腕を回す。
その拍子に、纏っていた布がぱさりと音を立てて落ちた。
「リンク……」
「ねえ、キス…して……?」
「―っ!」
無防備なその姿に、心臓が大きく跳ねる。
布越しに伝わってくる、リンクの体温。
眩暈を覚えるような青い瞳。
見上げられて、捕らわれたのが自分なんだと認識する。
アイクはおもむろにリンクを引き寄せた。
細い腰。
そして、あと少しで触れそうな、唇―
「アイクー!朝だよーーー!!!」
ムードをぶち壊すかのような声に、アイクの目はぱちりと覚めた。
それと同時にどかっと自分の上に何かが飛び乗ってくる。
しかも一人じゃない。
アイクは思わず「ぐわっ」っと情けない叫び声を上げた。
「おーい。朝だよー」
「あ、あぁ…」
顔を覗き込んできたのはトゥーンとカービィとピカチュウだった。
皆それぞれ、くりくりした大きな瞳で見据えてくる。
彼らはアイクが起きたのを確認すると、また騒がしくバタバタと部屋を出て行った。
(夢か……)
心の中でひっそりと呟く。
当たり前のことだった。
リンクがあんなことするなんて、世界が終わるとしてもありえない話なのだ。
(ほぼ毎晩こんな夢を見るなんて、俺もどうかしてるな)
口には出さずに言って、自嘲気味に笑う。
まるで、リンクに欲情しているようだった。
相手は男なのに。
自分は同性愛者だったのだろうかとさえ、思ってしまう。
答えのない疑問を心の中で渦巻かせながらものろのろと起き上がり、窓際まで行ってカーテンを開ける。
差し込んでくる日の光が眩しくて、アイクは目を細めた。
* * * * *
「アイク」
自分を呼ぶ声。
もう何度も聞いているせいか、声だけで誰のものかわかる。
それと同時に、またこの夢か、と思う。
しかし、自分を求めるリンクの存在が嫌かと問われたらそれは否めなかった。
そしてそれがおそらく恋なのだろうということに気付いてしまった自分がいて。
そうなれば、拒む理由なんてない。
「好きだ」
今まで自分の中で答えが出せずにいたもの。
これはきっとそういう想いなんだろうと思う。
アイクが言うと、リンクは一瞬小さく目を見開き、それから少し俯いて小さく頷いた。
熟れた果実のように赤いその顔がとても愛おしく思える。
一度認めてしまえば、もうそれで充分だった。
「リンク」
彼の顎に手をかけて、自分の方を向かせる。
青い瞳が揺れた。
そして手を掴んで引き寄せ、薄く開いた唇に自分のものを重ねる。
だがその瞬間、鳩尾に激痛が走った。
「くっ……!?」
思わず飛び起きた自分の目に写ったのは、顔を真っ赤にして、口元を手の甲で押さえるリンクの姿。
「なッ、何するんだよ!」
突然の出来事にアイクは目を白黒させる。
なんでリンクが此処に?
状況が飲み込めないでいるアイクをよそに、リンクは彼にしては珍しい早口で一気にまくし立てた。
「あ、アイクが全然起きてこないから、呼びに来たのに…!」
状況からして、おそらく自分は夢の中でだけではなく、本当にリンクにキスをしてしまったようだった。
しまった、と思う。
先程の痛みはリンクが殴ったからで、確かに男に突然キスをされればそんな行動をとるのも無理はない。
しかし「お前にキスをする夢を見ていた」などとは口が裂けても言えるはずもなく、アイクはなんと弁解したら
いいのかわからないでいた。
と言うよりも、そもそも「好きだ」ということ自体言えるわけがなかった。
自分達が男同士である以上、現実に受け入れられる筈がないのだから。
「リンク、待て…っ…これには訳が……!」
言い訳の常套句。
口から出たのはそんな情けない言葉だったが、リンクは相変わらず顔を真っ赤にしたまま部屋を飛び出て行った。
バタン、と扉が乱暴に閉ざされたのを最後に、部屋には静寂が訪れる。
あまりにも突然すぎる事態に、ただただ呆然とするだけだった。
アイクは再びベッドに倒れると、右手で目元を覆いながら溜め息をつく。
(俺は何をしているんだ……)
激しい自己嫌悪。
しかし、たった一瞬であっても、唇から伝わったリンクの体温を忘れることが出来なかった。
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夢と現実的な感じで(笑)
なんだか色々とはしょりすぎですいません…。
次はリンク視点でいきます(・ω・)
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