書斎での一件があってから、何故だかリンクのことが気になって仕方なかった。
気がつけば、目で追ってしまう自分がいて。
しかし別に話したいとかではなく、ただ見ているだけで充分だと。
そう思っている。
はずだった。
(おかしい)
アイクは対戦成績をまとめた書類の整理をしながら、一人で悶々と考えた。
それは此処最近見る夢のこと。
どういうわけか、いつも決まってリンクが出てくる。
確かに気になるのは認めるが、何故夢にまで出てくるのか。
(どうして俺はあいつのことばかり…)
はあ、と溜め息をついて書類を揃える。
らしくないと思う。
少なくとも、自分はこんな風にして考え込むようなタイプの人間ではない。
しかしふと思い出すのは、細い肩と金髪から覗く項。
青くて透き通った瞳。
見かけとは裏腹に意外と華奢な身体は、強く抱き締めたら壊れてしまうんじゃないかと思った。
相手は男なのに、暇があればこんなことを考えてしまう自分。
(俺はどうしたというんだ…)
そんな時、自分以外い誰もいない部屋に一人の訪問客がやって来た。
ガチャリとドアを開けて、入ってきたのはリンク。
抱えている箱の中にはフォルダが詰められていた。
突然の訪問客、しかも自分がここ最近気にかけている相手だったせいもあって、アイクは一瞬どきりとした。
「俺もアイクを手伝えってさ」
アイクが問い掛ける前に、リンクは口を開いた。
よいしょ、と言いながら箱をテーブルに置くと、箱が重たいのかどさっと音を立てる。
そして中に入っていたフォルダを一枚ずつ取り出してはテーブルの上に重ねて置いていく。
赤、青、黄色、緑…とカラフルなフォルダだった。
リンクはそれらを箱から出すと、アイクの横に座った。
「この書類をフォルダに綴じていけばいいんだろ?」
「ああ」
アイクが返事をするのを境に、それから二人は言葉を交わさなくなった。
リンクは元々べらべらと喋る方ではないし、アイクも口数は少ない方だ。
アイクは何か話した方がいいのだろうかと思うものの、自分がマルスやピットのように話題に豊富ではないことを知っている。
変に話をして場の空気を濁してしまうのもなんだか嫌だったせいもあって、口は開かずだった。
ちらりとリンクの方を盗み見ると、涼やかな顔で書類をまとめていく。
乱闘の時につけているグローブをつけていないせいか、手がいやに白く見える。
手の甲は少し骨張っているが、指は思いの外細かった。
(…俺は何を見ているんだ……)
は、と我に返って、アイクは若干の自己嫌悪に陥った。
男の指を見たって別に面白くも何もないのに。
コチコチと時計の針の音だけがやけに大きく響く。
無言のまま、アイクは書類をまとめ、リンクはそれをフォルダに綴じて箱へと閉まうという作業を繰り返した。
しかし、そんな沈黙もリンクが発した「痛ッ」という小さな声によって掻き消されることになる。
ばさっと音がしたと思って隣を見れば、書類に赤い斑点。
「どうした?」
「ちょっと紙で切ったみたいで…」
所謂ペーパーカットというやつで、何かの拍子に紙で指を切ってしまったらしい。
少し深く切れたのか、書類に零れ落ちたのはリンクの血だということがわかった。
「ごめん…」
「これくらい平気だろう。それより痛むのか?」
「ちょっとだけな」
「結構深いんじゃないか」
「まあな。でも平気…ッ……!?」
おもむろに手をとって、血が滲む指に唇を寄せる。
それと同時にリンクの目が驚きで見開かれた。
本当に何の意図もない行為だった。
突発的行為とでもいうのか。
傷口に舌が触れると、リンクは小さく身じろいだ。
「アっ、アイク……っ…!」
少し上ずった声で名前を呼ばれ、アイクはリンクを見た。
視線がぶつかる。
アイクの目に映ったリンクは、かぁぁっと顔を赤くして、何故だか少し眉を下げていた。
今までに一度も見たことがない顔だ。
悪いことをしたかと思って手を離してやると、リンクは慌てて手を引っ込める。
そしてガタンと音を立てながら勢いよく椅子から立ち上がると、「ドクターマリオの所に行って来る」と言って
バタバタと部屋を出て行ってしまった。
「………」
ぽつん、と一人部屋に残されたアイクは先程のリンクの顔を思い浮かべた。
朱に染まった顔。
そして彼のチャームポイントの1つともとれる大きな青い瞳は、心なしか潤んでいたように見えた。
自分はその瞳に吸い込まれてしまっているのだろうか。
別に誰かに相談するわけでもなく、そんなことを自分自身に問い掛けた。
答えはないけれど。
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相変わらず鈍感な団長(笑)
もう少しだけアイク視点で進んでいきます。
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