神様の






「参ったな」


ああ、もう。これだから6月は嫌いなんだ。梅雨の季節。
毎日毎日、これでもかという程雨が降る。
暗いし、じめじめするし、雨の中を出歩くと濡れてしまうし。鬱陶しい。
紫陽花は好きだけれど、カタツムリは好きじゃない。
そんなことを考えている間にも、雨はどんどん強くなっていく。
止む気配のない雨を見て、はあ、と大きく溜め息をついた。



今日は僕が買い物を担当する日だった。
出かける前は晴れていたのに、買い物が終わっていざ帰ろうと思って店を出たらまさかの大雨。
そういえばゼルダ姫が「今日は午後から雨らしいので、気をつけて下さいね」って言っていた気がする。
けどまさか雨が降るなんて思ってもみなかった。
だってあんなに晴れていたのに。
青天の霹靂ってやつだ。
だから当然、傘も持っていないわけで。
雨の中濡れて帰るという選択肢もあるのだけれど、荷物が濡れてしまうし、羽根が濡れてしまうのも避けたかった。


「どうしよう」


何も出来ずに、店の前の屋根の下で一人で佇む。
かれこれ10分くらいはこうしているような気がする。
傘を買って帰ればいいじゃないかと思われるかもしれないけれど、生憎この雨のせいで傘は既に売り切れだった。
皆僕と同じように、雨が降るとは思っていなかったのだろう。


「あーあ」


ツイてない。
はあ、とまた溜め息をついた。
そんな時、がーっと自動ドアが開いて中から人が出てくる。
その人は僕を見て、驚いた顔をしていた。
そして僕も驚いた。


「ピット!」

「リンクさん!」


中から出てきたのはリンクさんだった。
手には小さな袋と傘が1本。


「どうしたんだ?こんな所で」

「今日は僕が買い物の当番で…」

「そういえば昨日マリオがそんなこと言ってたな」

「リンクさんこそ何してるんですか?しかも一人で…」

「俺は罰ゲームでお菓子を買いに来てたんだ」

「罰ゲーム?」

「ああ。ネス達と人生ゲームやってたんだけど、俺が負けてさ」


そういって苦笑する。
リンクさんは小さい子達に懐かれているようで、いつも一緒に遊んであげていた。
ゲームの罰ゲームといってお菓子までちゃんと買いに来るなんて、律儀だなと思う。
そういう優しさがあるから、好かれるのかもしれない。


「しかしすごい雨だよな」

「そうですね」

「あれ?ピット傘は?」


青い目を丸くして、尋ねてくる。
リンクさんは手に傘を持っているけど、僕は傘を持って来ていない。
当たり前だ。出かけた時は晴れていたのだから。


「あの、屋敷を出た時には晴れていたから…その、傘を持って来てなくて…」


太陽はいつの間にか消えていて、気がつけば大雨。空が泣いていた。
全く泣きたいのはこっちの方だというのに。
リンクさんは少し前に出ると、傘を開く。シンプルな紺色の傘だった。
そして僕の方を振り返る。


「ほら、おいでよ」

「え…?」


思いもよらない言葉に思わず聞き返してしまう。
だって傘は1本しかない。
僕が入れば、必然的にリンクさんは半分しか傘に入れないことになる。


「2人だと狭いかもしれないけど」

「でも…!」

「そのままじゃ綺麗な羽根が濡れちゃうだろ?」


ふわり、と微笑まれて心が跳ねる。
続けて「俺は濡れても平気だしさ」と言われ、またどきりとした。


「そんなに遠慮するなって」

「……はい」


せっかくだからリンクさんの好意に甘え、傘に入れてもらう。
傘に入った僕を見て、リンクさんはにこりと笑った。
なんだか恥ずかしくて、顔が見れずに俯いてしまう。


「雨の音っていいよな。なんか心が洗われる感じで」


歩きながら、リンクさんは言った。ぱしゃぱしゃと水が跳ねる。
当たり前だけどリンクさんの方が背が高いから、傘は彼が持っていた。
ちらりと見上げてみると、整った横顔が目に入る。


「俺、本当は雨って好きじゃないんだけど…雨上がりの空とか好きだからたまには降って欲しいかなって」

「そうですね」


そういって、小さく笑う。
雨はまだ止まない。
けれど、貴方とならこの雨も少しは好きになれるかもしれないと思った。



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ピット×リンクよりはピット&リンクな感じで。
6月ですね。梅雨の季節ですね。
でもこれを書いた日はびっくりするほど晴天でしたけれども!

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