いつも皆が遊んでいる丘を下った先には森がある。
そしてその森の深くには、誰も知ることのない秘密の場所があった。
誰も知らない、僕達だけの―







2人だけのサンクチュアリ






秘密の場所は、森の最奥に存在した。
何度も何度も曲がりくねった道を行った先に、周りを木々に囲まれて上から見たら円になっている場所がある。
その中心には泉があり、そこだけはまるで海辺の砂浜のような、キメ細やかな白い砂が泉の周りを覆っていた。
そして一体何処からやって来たのか、2つの大きな岩も砂と一緒に泉を守るかのようにしてあった。
また、木々が周りに生えて真ん中がぽっかりと空いているが故に、薄暗くてじめじめした森とは違い、
そこだけ常に陽の光が差し込んでいる。
森林にあるオアシスといっても間違いはない。
まるで別世界のようにひっそりと存在するこの場所は、リンクとアイクの秘密の場所だった。
といっても、本来はリンクが心を休ませるために一人で通い詰めていた場所だったのだが、
ある日偶然にもアイクがこの泉で剣の稽古をしていたのだ。
最初は自分のテリトリーを踏み荒らされたように思ったリンクも、相手が寡黙なアイクだったため
知らず知らずのうちに彼を許すようになっていた。
これがカービィやトゥーン達であればそうはいかなかったかもしれないが、アイクはあまりべらべら喋る方ではない。
リンク自身ははこの場所を内緒にしたいと思っていたし、アイクもわざわざ誰かに言うようなことはしなかった。


「皆には内緒だよ」


片目を瞑り、人差し指を立てて口元に当てながらリンクはアイクに言った。
それ以来、2人は気が向いた時に幾度となくこの泉を訪れていたのである。






* * * * *






「ずっと前から気になってたんだけどさ」


いつも2人は岩場に腰掛けながら、他愛もない会話をする。
リンクに至っては、ブーツとタイツを脱いで素足を水の中に入れていた。
岩場に座っている状態だと、足首の少し上までが水につかる。
リンクは水の中でぶらぶらと脚を動かしていたが、ふと思いついたように右足を勢いよく水から上げる。
ぱしゃりと水が跳ね、飛沫が陽の光を受けてキラキラ輝いた。


「アイクの両親ってどんな人?」

「俺の両親?」

「だってアイクはあまり自分のことを話さないから」


今まで水の中で動いてたリンクの細めな足首を見つめていたアイクがリンクの顔を見る。
目が合うと、リンクは口元だけで笑った。


「父親はグレイル傭兵団を率いる団長だった。母親は…父のことを尊敬している人だったな」


泉を挟んで自分の正面にある木を見ながら、アイクが言う。
リンクはそんなアイクを見て、同じようじ正面を見据えた。
チチチと何処かで鳥が鳴いている。


「そっか。俺なんて両親の顔すらわからないから…羨ましいな」


言ってから、リンクは寂しそうに笑った。
自分をここまで育て上げてくれたのはトアル村の村長であるボウだった。
しかし、彼とは血の繋がりがない。
無論血の繋がりが家族だと思っているわけではないが、やはり自分と同じ血が流れる両親に
会いたいとリンクは心の何処かで思っていた。
ボウが本当の父親でないことを知っているから尚更。
まだ16歳であるリンクにとって、両親を知らないことは少し荷が重すぎた。


「お父さんとお母さんは元気?」


そう尋ねると、アイクの肩がぴくりと揺れる。
しかし平静を装ってアイクは答えた。


「……いや、もう大分前に死んだ」


そういって、目が伏せられる。
リンクの心がどくんと発作のように鳴った。
いけないことを聞いてしまったという罪悪感がふつふつと湧き上がってくる。


「あ…ごめ……俺、知らなくて……」


アイクがリンクの方を見れば、申し訳なさそうな顔をしている彼がいた。
目が合うと、視線を逸らされる。
だからアイクもリンクの目を見なかった。


「気にするな。人は皆死ぬ………2人には…それが早すぎただけだ」


静けさの中にアイクのテノールが響いた。
リンクはアイクが放った言葉に反応し、視線をアイクに戻す。


「なんで……」


視線を感じたアイクもまたリンクを見据えた。
蒼い瞳が揺らいでいる。
整ったその顔は泣きそうに歪められており、それでもやっぱり綺麗な顔をしているなとアイクは
口に出さずに考えた。


「死ぬのが早すぎたとか…そんな悲しいこと言うなよ……」


そういって、リンクはぎゅっと拳を握る。
自分は両親のことを知らなければ、生きているのか、死んでいるのかすらもわからない。
仮に生きていたとしても、リンクには彼らの記憶がないため顔がわからなかった。
むこうが気付いてくれなければ永遠に出会うことはない。
もっとも、自分も16年前と比べたら大きく変わっているから両親も自分の子供に気付かないかもしれない。
どちらにせよ、リンクにとって自分の両親は必然的に死んでいるのと同じことだった。
それは無知という名の死。


「人は脆い。人間は常に死と隣りあわせだ。ハイラルを救ったお前ならわかるだろう?」


濃紺の瞳がじっと見つめてくる。
アイクの言っていることが痛いほどわかるだろうと問われたら否定は出来なかった。
生きるか死ぬか。
ハイラルを救うにおいて、常に自分に突きつけられていた二択。
そして生きるために自分は剣をとった。


「わかってるよ、そんなこと……」


リンクが弱弱しく頭を振る。
アイクはただじっとリンクを見つめていた。


「でも、死ぬのが怖くない人なんていない…ッ…」


俯きながらリンクは呟く。
よく見たら、涙が頬を伝っていた。
拳はまだ握り締められたままで、力が入っているのか少し赤くなっている。
別に泣かしたかったわけではない。
アイクは自分の手を握られた拳の上に重ねる。
アイクの手の方が幾分か大きいため、リンクの握りこぶしはすっぽりと収まった。
そしてもう片方の手をリンクの頬へそっと伸ばす。


「…悪かった。リンク」

「………っ、ぅ………」


嗚咽が混じり、リンクの肩が小さく震えている。


「だから、泣くな」


アイクの顔が近づく。
その気配を感じてリンクが少し顔を上げると、口付けられた。
涙で濡れたリンクの瞳が見開かれ、思考が停止する。
静寂が2人を包み、音一つしない。
ゆっくりとアイクの唇が離れ、頬に添えられていた手の親指で涙を拭われる。
だんだん思考がはっきりしてきたリンクは、顔を赤くして口をぱくぱくと動かした。


「ア、アイク…今……っ……キス………ッ…!」


ファーストキスだったのだろうか、尋常じゃない動揺ぶりだった。
アイクにしてみれば、片恋であれ自分の好きな人のファーストキスは嬉しい他ない。
ただ、リンクにとってはどうだったのだろうか。
もしゼルダや他の人が好きなのであれば、リンクにとってはアイクとのキスは災難以外なんでもなかった。


「嫌だったか?」

「えっ……?」

「イヤならイヤとはっきり言え。俺はエスパーじゃない」


そう、自分には生憎ネスやリュカのような超能力は持ち合わせていない。
だからリンクの口から直接聞くしかなかった。


「い…嫌……じゃない、よ……」


きっと恥ずかしいのだろう、俯きながらリンクが小さな声で言う。
よく見るとさっきよりも顔が赤くなっていた。
シャイなリンクにとって、この一言は大分頑張って言った方かもしれない。
そんなリンクが微笑ましくて、アイクは笑った。


「そうか」


少しだけ見つめ合って、再び重なる唇。
堅く握られたリンクの拳も解かれ、いつの間にかアイクの指と絡められていた。

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アイクの口調がだんだんわからなくなってきた/(^0^)\
なんかアイリンで連載書きたくなってきたなあ。
切ないの。すれ違い。でもほんとは両想い…書けるのか^q^
とりあえずお風呂に入らねば←


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