「うあっ!」
勢いよく吹っ飛ばされてどさっと仰向けに倒れる。
そして起き上がる間もなく、自分のこめかみの横にドスっと剣が突き刺さる。
「今回は僕の勝ちだね」
普段の温和なマルスから程遠く離れた、挑戦的な笑み。
リンクは「くっ」っと呻いて唇を噛んだ。
「でも君も相変わらず強いね。負けるのかと思って一瞬ヒヤヒヤしたよ」
言いながら地面に刺さった剣を引き抜いて、マルスは服についた汚れを払う。
リンクもノロノロと起き上がるが、体の節々がジンジン痛んで思うように動けなかった。
そんなリンクを見かねて、「大丈夫?」と言いながらマルスが手を差し伸べる。
「ありがとう」そういって、リンクはマルスの手を借りて立ち上がった。
* * * * *
夜―
リンクは一人で丘に来ており、いわゆる体育座りをしながらぼーっとしていた。
別に皆といるのが嫌いなわけではないが、一人でいることに慣れすぎてしまったために
一線を置くようになってしまったのだ。
それは皆もわかっていることだから、敢えて無理矢理リンクを輪の中に入れるようなこともしない。
夜風に吹かれて揺れる花を見ながら「はあ」と溜め息を一つ。
原因は今日の敗北だった。
初めてマルスに負けたわけじゃない。この前は自分が勝った。
しかし、負けることは気分がいいことでもない。
強くなりたい。
ハイラルにいた時は向かう所敵無しで、自分が一番強いと思っていた。
各神殿にいるボスやダーク、ガノンはやはりそれなりに強くて、リンクも苦戦を強いられたが、
それ以外の敵は、剣の腕を重ねることによって簡単に倒せるようになった。
強くなっていく自分に自信が持てて、怖いものなんてなかった。
此処に来るまでは―
当然ながら、此処には選ばれし者だけが集結している。
選ばれただけあって、皆相当の力を持っていた。
誰が一番強くて、誰が一番弱いかはわからないし、そんなことはリンクにとってはどうでも良かった。
ただ、自分の力を思い知らされたのが何よりも辛くて惨めだった。
「井の中の蛙、大海を知らず」という言葉があるが、まさに自分がそれだったように思う。
世界には、こんなにも強い人達がいるなんて。
「わかってるつもりなんだけどさ…」
リンク自身、負けっぱなしなわけではない。
ただ、負けることだってある。
その度に強くなりたいと、それだけを心の底から思った。
「悩み事か?」
突然聞こえる声にどきっとする。
慌てて振り返ってみれば、切り株の上に立って腕を組んでいるメタナイトがいた。
紫色のマントが風でなびいている。
「メタナイト!あ、貴方こそこんな時間に何を…」
「散歩だ」
間髪入れずにそう答えられて、リンクは少しばかり呆気にとられた。
メタナイトは切り株からぴょんと飛び降りると、リンクの横へやって来る。
リンクが黙って見ていると、彼はリンクの横にちょこんと座った。
「今日は月が出ているな」
「そうですね。メタナイトのように丸…じゃなくて、何でこんな時間に散歩を?」
思わず本音が出そうになり、リンクは慌てて話を変える。
メタナイトはそんなリンクに気付いてか知らずか、目の前に咲いていた花をぷちっと引き抜いた。
「食後は散歩をすると決めているのだ」
「あぁ、なるほど…」
「お前こそこんな所で何をしていたんだ。しかも一人で」
「俺は……」
言いかけて、リンクは視線を足元へ向ける。
少しばかり沈黙が流れる。
「あの…」
「どうした?」
「強く…なるにはどうしたらいいんでしょうか…?」
リンクの言葉が予想外の言葉だったようで、珍しくメタナイトが驚いていた。
「お前は充分強いと思うが。何か不満なのか?」
「いや、あの不満っていうか…!その、今日マルスと稽古してたんですけど。なんだか調子が出なくて…」
強い。弱い。
考えると葛藤になって、集中力が削がれていく。
強くなりたいという思いだけが一人歩きしてしまっているようで。
思いだけじゃダメなのはわかっている。
だからこそ、余計にプレッシャーだった。
メタナイトは花を弄んでいた手を止めて立ち上がると、リンクの方を向いた。
「お前はどうしたいんだ?」
真っ直ぐ見据えられ、リンクの体が強張る。
「強く、なりたい」
少し俯きながら、遠慮がちに言う。勇者らしくなかった。
けれど、それは恥ずかしいとか笑われるかもしれないう思いがあったからかもしれない。
しかしメタナイトは相変わらずの調子で答えた。
「それでいい。私がちゃんと守ってやろう」
「え…!」
メタナイトの言葉にリンクが驚く。
確かにメタナイトに守ってもらえるのは光栄なのだが、自分だって一応勇者なわけで…。
そんなことをリンクが思っていると、それを察したようでメタナイトが言う。
「私が守るのはお前じゃない。お前の信念と志だ」
「信念…と、志…」
「お前が強くなりたいという信念と志を持っているのならば、それを貫け。強くなりたいと願うのは、恥ずべきことではない」
少し強い風が吹いて、ばさっとマントが音を立てる。
リンクは小さく笑った。
「俺、強くなります」
メタナイトは頷くと、マントを翻した。
月の子供は笑う
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カップリングじゃないと何故だか上手くまとまらない…。
メタ様の一人称は私でいいんだっけ。
「今回は僕の勝ちだね」はマルスの台詞だったっけ。
そんな疑問がふつふつと湧き上がってくる^q^
メタ様はマイペース(´▽`)
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