触れたいのに触れられないのは、貴方があまりにも気高すぎるから。
だけど、この手で貴方に縋りたいと思うのは我儘ですか―?








Blue rose








「眠れないんだ」


そういって、夜遅くにアイクの部屋に突然押しかけてしまった。
眠れないのは嘘じゃない。
けど、眠れないことを口実に会いに来たんだろう?と問い掛けられたら否定は出来なかった。
会いたい。そう思ったのも事実だ。
だけど、口が裂けてもそんなことは言えない。
突然部屋にやって来た俺を見てアイクは少し驚いていた。
そりゃそうだ。俺は11時には寝てしまうようなやつだったから。
部屋の中に入れてくれて、ベッドに座らせてもらう。
ああ、いつもアイクは此処で寝ているんだな…と思っていると、「どうした?」と尋ねられる。


「眠れない」


嘘ではない。確かに俺は眠れなかった。
いつも通りベッドに入って、布団をかけて、目を閉じる。
なのに、眠れない。


「眠れないってどういうことだ」

「わからない」


そういって俺は俯き、頭を振った。
寝たい、という気持ちはある。
なのに目を閉じて写るのは、瞼の裏に焼きついている貴方の姿。
普段はあまり見ることのない、優しい微笑み。
そして差し伸べられる手。
俺はその手を掴んでいいのかと一瞬躊躇するけど、いざ掴もうとして手を伸ばせば消えてしまう。
所詮は届かない存在。
わかっているのに。けど、なんだか悲しかった。
夢の中でさえも、遠い。


「アイク」


ゆっくりと顔を上げて、アイクを見る。


「なんだ」


深い海のような色の瞳。
この瞳にいつも溺れている自分がいる。


「抱いて」

「何……?」


衝動的に零れた言葉。
アイクの瞳が驚きで見開かれる。
当たり前だと思う。
けど、もう既に溺れてしまっている俺はどうすることも出来なくて。
アイクの寝巻きの裾を少しばかり掴んで、俺よりも座高が高いアイクを見上げる。


「俺のことを抱いて」


振り返ってみれば、どうしてこんなことを言ってしまったんだろうと思う。
でも、こうでもしないと辛かった。
手を伸ばしても届かない存在とわかっていたのに。






* * * * *






「あっ、ん…やぁっ……」


内壁を擦られ、体が跳ねる。
仰向けになるアイクを俺が跨いで、腰を揺らす。
着ている寝巻きはボタンが全て外されてほとんど脱げかかっている状態だったけど、そんなことはどうでも良かった。


「んッ、ぁ…ふ、んん……っ」

「…っ、やめ……ッ…!」


腰の動きを少し早めると、アイクの顔が歪む。
多分、絶頂が近いのだと思う。
俺も男だから、そういうことはなんとなくわかっていた。


「アイク……っ、もうイく……?」

「ああ…っ…だから、もう……」


いつから体を繋げているのかわからない。
もうずいぶん長い間こうしている。
今、何時だ?
そう思っても、時計を見る気はなかった。


「俺の…中に出して……っ…」

「だめだ…ッ……」


俺が言うと、少し辛そうな表情でアイクはそれを拒んだ。
もうさっきから何回も俺の中に出してしまっているにもかかわらず。
けど中に放った場合、後でちゃんと処理をしないとお腹を壊したりするということもあってそれなりにリスクが伴う。
そういうこともあって、きっとアイクには俺に対して罪悪感のようなものがあるのかもしれない。
でも俺にはそんなことは関係なかった。
アイクを自分の中に刻み付けたい。ただ、それだけ。
それが俺の一方的な思いだということも、自分ではわかっていた。


「あっ…は、ぁ…っんん……!」

「リンク…っ…!ぁ、く……ッ…!」


水音を立てながら腰の動きを早める。
一度大きくグラインドすると、その時にアイクが達したようで中に熱いものが注ぎ込まれた。
お互い酸素を求めるように息つぎをする。
アイクは俺の体を少し持ち上げて自分のモノを引き抜くが、同時に今まで中に放たれたものが溢れ出て
俺の内股を伝っていった。
その生暖かい感触にを震えながら、体勢を整えて再びアイクのモノに手をかける。


「リンク…やめ……っ…」

「ぁ、んっ…っア……!」


アイクの言うことを聞かずにゆっくり腰を下ろして、挿入する。
中の液が潤滑油となっているためか、痛みはなかった。
くちゅ、と音を立てながら全てを飲み込むと、アイクの肩に手をかけて動き出す。
さっきよりも深い所を突くようにして腰を揺らした。


「ねぇっ…アイク……わかる…?此処が俺の奥…」


身を屈めて、アイクの顔を見る。
こんなに距離が近いのに、アイクの整った顔がぼやけて見えるのはどうしてだろう。
俺は目を閉じて、腰を深く下ろす。


「アイクの、当たってる…っ………」


腰を動かして最奥を擦り付けると、たまらない快感が突き抜ける。
しかし、同時に背徳心が俺を襲った。
初めて出会った時のことがフラッシュバックして、脳内をぐるぐると駆け巡る。
あの日は雪が降るくらいとても寒い日で、俺は屋敷の外から中にいたアイクを見かけたのが最初だった。
力強い眼差し、真っ直ぐな視線、深い藍色の瞳と髪の毛、そして孤高で気高いその姿に目を奪われた。
彼についてはグレイル傭兵団の団長であることしか知らなかったから、余計に鮮明だったのを覚えている。
そして同じ剣士であるのに、自分とは全てにおいて真逆である。
そんなこともあって、アイクは何処か遠い存在に思えた。
触れてはいけない。
アイクを見る度にそう思った。


「ッ…ぁ、やッ…アイ、ク……アイク……っ…!」


嗚呼。俺はなんて汚いんだろう。
自分の想いも告げずに体だけ繋げてしまった。
それも一方的に。
確かに、いつかはこうなることを望んでいた。
でもそれはちゃんとお互いが認め合ってのことであって、俺の自分勝手な我儘でのことではない。
許されるわけでもないのに、請うように想い人の名前を呼ぶ。
すると、腰を捕まれて一度強く突き上げられた。


「っああ…っ、やぁっ!」


派手に喘いで体が仰け反ると、その反動でアイクの上へと倒れこむ。
密着する体。
アイクは寝巻きの上を着ていたから直に肌同士が触れたわけではないのに、馬鹿みたいに自分の体が熱くなる。
そして絶え間なく与えられる律動にただ悶えた。


「やっ…ぁ、あん…っ…!」

「ん、く…ッ……」

「あっ、は…ぁっ、あぅ…ッ…」


アイクに奥を突かれる度、中に出された蜜が溢れてぐちゅぐちゅと厭らしい音を立てる。
本当なら耳を塞ぎたくなるほど恥ずかしいはずなのに、今の俺には何も考えられなかった。
自分の脚を伝う白濁のそれさえも快楽の火付け役となって、俺を溺れさせる。


「ん、あっ…や、ぁあ…ん…!」


口から零れるこの声も、もう止めることは出来なかった。
汚くて、淫らで、浅ましい自分の姿。最低だ。
こんな自分にアイクは失望しただろうと思うし、嫌われても仕方ないと思う。
自分の手で壊してしまった、俺達の関係。
愚かだった。どうしてこうなることがわからなかったんだろう。
触れてはいけなかったのに。


「っ、リンク……ッ………」


名前を呼ばれて抱き締められる。
本当なら嬉しいはずなのに、なんだか酷く悲しくなって目を伏せた。
だめだよ。汚いから。
俺に触ったら、穢れてしまう。

零れる涙。
繋がる体。
けど、想いが繋がることは永遠に、ない。



"Blue rose"

見放された、神様の祝福。

裏切られた、奇跡。

二度と戻れない日々。



あの青い薔薇は今日も咲く。

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Lilyと同時進行でリンク視点。
暗っ!もうびっくりするほど暗い…(((゚д゚)))
そして見事に擦れ違ってる2人なのでした。
両想いなのに報われないってどんだけ(笑)

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